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「天は赤い河のほとり」パロディ???小説(5)

「オロンテス決戦外伝」の外伝


この話はパロディ4話「オロンテス決戦外伝」と並行して起こった、もうひとつのストーリーです。
(この話では「天は赤い河のほとり」のキャラクターは一切出てきません。たまにはいいでしょ。)

幕営にて
ウガリットの近くのヒッタイト幕営
「ワハハハハ」「ゲラゲラゲラ」
元老院文官、シュンシューン・イナリが物資の配給状況の視察から幕営に戻ると、幕営にいた文官仲間や兵士達から大笑いが起こった。
「シュンシューンさま、なんですかその馬は??」
「そんなおかしいか??、私は気に入っているのだが」
「あまりにも変な柄だったので、笑ってしまいましたよぉ」
 
 
 
 

幕営にて
ヒッタイト建国以来、過去最大の規模と言われる今回の決戦。
馬は簡単に増産が出来るものではなく、戦車隊や将兵達に良い馬を回した結果、文官へ馬が行き渡らなかった。
(コミックで描かれていないところでは、馬がなくて苦しんでいる者が大勢いたのである)
シュンシューンも、何とか老馬を手に入れてハットゥウサからここまでやって来たが、その馬も力つきてネルガルに召されてしまった。
さらに、シュンシューン付きの執事も、馬の介抱に疲れたためか、寝込んでしまった。

仕方がないので、1人で徒歩で視察に向かったのだが・・・・
 
 
 

馬を手に入れるまで(竹トンボ)
シュンシューンは別の陣地に歩いていく途中、木陰を見つけて休憩した。
足元を見ると、どちらの軍のものかは分からないが、矢とか壊れた戦車の部品が落ちていたので、短剣を使って竹トンボを作ってみた。
(そう言えば、100円ショップで買っては子供たちと遊んだなぁ。懐かしいなぁ)
竹とんぼを飛ばしていると、反対方向から隊商の馬車がやってきた。
リーダーらしい男が「文官さま。長老の孫がその不思議なおもちゃを欲しがっています。ぜひお譲り下さい」
竹トンボの代わりに、袋いっぱいのナツメの実をもらった。おいしい。お腹もふくれた。でも、一袋は重かった
(お米を10kg買ったとして、スーパーだとレジから車まで5分も担げばいいが、ずっと担ぐことになるのかなぁ)
 
 
 

ナツメ
シュンシューンがナツメを抱えて歩いていると、道ばたに貴族のものと思われる馬車が止まっていた。
「ヒッタイトの文官とお見受けするが」付き人らしい男に声を掛けられた
「私たちはカナンの貴族。馬車が故障して代わりの馬車を手配しているところだが、姫さまがお腹がすいたとおっしゃっている。何か食料を分けてくださらぬか」
「それはそれは。では、このナツメを差し上げます」
「一袋全部??」
「ええ。皆さんも食べてください。」
「さすが、ヒッタイトの文官。気前がいい。お礼に、この額飾りを差し上げます」
シュンシューンは、もらったばかりの額飾りをつけると、先に進んだ。
宝石がいっぱい付いて、とても高価そうだ。
 
 
 
 

額飾り
夕方になり、シュンシューンは、ある街の宿屋に泊まることにした。
食堂で食事をしていると、「ヒッタイトのお役人さま」と若い女性に声を掛けられた。
「私??」「ええ」
「どうしたのですか」
「実は、さっき、『主人が戦死した』と連絡が入り、遺品が送り届けられてきたのですが、その中にこのようなが入っていました」
「ほお」
「私如き者が持っていても何の役にも立たないので、その、買っていただきたいのですが」
シュンシューンは、未亡人となったこの女性に思いを馳せた。これから苦難の生活が始まる・・・・
「わかりました。私もあまり持ち合わせがないので、充分な額をお渡しできません。この額飾りもいっしょに差し上げます。」
(生活に困ったら売ってください。きっとお役に立てると思います。)
「ありがとうございます。もし、よろしければ、額飾りのお礼に今晩一晩・・・・躰がうずくの
「い、いえっ。結構です。」こんなところで未亡人に掴まったら大変だ。

宿屋に帰り、この剣をよく見たら青銅の剣だった。
確かに、ヒッタイトでは戦死者の鉄剣は全て回収しているので、これは亡くなった兵士がエジプト兵から奪ったものだな。
ま、文官用の鉄の短剣を持っているのでどっちでもいいけど。
 
 
 

青銅の剣

翌朝、最前線にほど近い陣地を視察した後、街道を歩いていると、エジプト兵が数人倒れている。
剣を擬して近づくと「ヒッタイトの文官さま。お助け下さい」と一人の兵士がひれ伏した。
「どうした??」
「実は・・・・」
この兵士は仲間と連れだって、馬を運んでいたのだが、地元の蛮族に襲われ、彼以外は全員殺害されてしまったという。馬も死んでしまったり、傷ついたり・・・・・
更に、剣も奪われた。
エジプトの幕営に戻って報告したいところだが、剣なしで蛮族のいる集落を通過するのは自殺行為だ

「それはそうとして、この馬はどうするのかね。」
「傷ついてしまったものも多く、私一人では連れて歩けません。自分用のを1頭残し、あとは蛮族の手に渡る前に始末を・・・」

シュンシューンは毛色の変わった元気なを見つけだすと、青銅の剣との交換をもちかけた。
 「ええ、のぞむところです」
「ところで、この馬だけ柄がちがうのは??」
「実は、エジプトの奥地の原住民が、ファラオに献上したもので、この戦争で馬が足りなくなったので戦場に駆り出されたのです。足は速いのですが、 どうも敵を見ると逃げ出してしまうために軍馬には向きません・・・・・私は連れて帰るつもりではないので、引き取って頂けると助かります。」

そこに、馬商人の隊商がたまたま通りがかったので、残りの傷ついた馬は無償で渡した。治療して、農耕馬として農民に売るのだという。

数刻後、剣を携えたエジプト兵と、馬に乗ったシュンシューンは再会を約束して別れた。
 
 

確かにこの馬は早かった。2日かけて歩いたところを半日足らずで駆け戻った。
馬も、処分されるか農耕馬にされるところを新しい主人に仕えることができて嬉しそうである。
シュンシューンは「マイシマ号」と名付けた。

ヒッタイトの幕営に駆け戻った所、(冒頭のような)爆笑の渦が起こったのだが、まあ、こんな馬じゃ無理ないかな。
 
 
 
 


新しい飼い主にお仕えできて嬉しそうな迷馬「マイシマ」号

パロ元の「わらしべ長者」だと、馬が屋敷に替わるのだけど、この話はここでおしまい
 
 

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(C) 2004 SHUN-SHUUN INARI



この話では、時代背景だけ借用して、原作キャラクター非登場の話にしてみました。これも原作のパロディになるのでしょうか。
18巻が舞台の話以降、シュンシューンの馬は全てこの「マイシマ号」ということになります。
この話以前のシュンシューンの馬は借り物で、エジプトとの戦争のため徴用され、老馬を代わりにあてがわれた、というところでしょうか。

ちなみに、実際にはシマウマに人が乗ることは難しいそうです。(ムツゴロウ王国の)畑正憲氏の著書によると、速く走るために背骨が柔らかいとか。