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「天は赤い河のほとり」パロディ小説(6)

「新皇帝の失敗」
~12巻の裏話(珍解釈??)~





新皇帝陛下、カイル・ムルシリ二世の戴冠式も無事終わった数日後。
戴冠式の後片付けも済み、元老院文官シュンシューン・イナリは久々に定時に自宅に戻った。
ここ数日は、子供達が起きる前に出仕し、子供達が寝てから帰宅する日が続いていたのだ。

子供達は久々にパパと会ったので大喜び。
シュンシューンの妻、アリエル・ベンザイテンが夕食の支度を整えていると・・・・・

王宮からの馬車がやってきた。

「これはこれは、女官のシャラさま。このようなむさ苦しいところに。」
シャラは、マントを外すと、シュンシューンに言った。
「私も平民の出、全然平気ですわ。それより、シュンシューンさまの奥さま、アリエルさまにお願いがあるので、こうして参りました」
「えっ、アリエルに??」




カイルさまが皇帝陛下になって数日。今まで、ユーリさまは引っ越しなどで忙しい毎日を過ごされていたが、部屋も片づき、後宮も落ち着いてきた。
で、ここのところ皇帝陛下の様子がおかしい。
今夜、ユーリさまを本当の側室にするための決意を固められたようなのだ。

「で、陛下の御決意と我が妻アリエル、何か結びつくのかね」シュンシューンは言った「我が愛妻に皇帝陛下が何かするというのであれば、私は皇帝陛下といえ ども差し違えるぞ」
「いえいえ、早まらないでください。シュンシューンさま。シュンシューンさまがお持ちのアレを貸していただきたいのです」

シャラは女官たちが立てた作戦を語った。
「そうか、皇帝陛下が力ずくでユーリさまを本当の側室にしてしまうと、ユーリさまの性格から考えて、ユーリさまはそれを受け入れるどころか・・・・」
「はい、今の状態のユーリさまですと、心が大きく傷ついてしまい、頑なになるので、お気持ちが陛下から離れてしまう、そうなると、私たちは皇后さまとして お迎えすることができなくなってしまうのです。」
「私たちは、ユーリさまにここに留まっていただきたいのは山々ですが、ユーリさまにはお気持ちが整われてから真の側室になっていただきたいのです」付き 添っていた別の女官も言った。



「で、アリエルさまにお願いする事情を確認いたしますと・・」
「それは、さっき聞いたとおりだね。アレの操作は私とアリエルしかできないのだが、夜の後宮に、側近や護衛兵以外の男が入るのは難しいということかな」
「はい。そこで、アリエルさまには女官に化けていただきたく存じます」ともう一人の女官
「ですが、いくら女官とは言え、皇帝陛下と側室の寝室に無断で入ると死罪になる場合があります。アリエルさまにこのような辛い任務をお願いするというのは 私たちも心苦しいのです。もちろん、私たち三姉妹やイル・バーニさまも全面的に応援いたします」

「アリエル・・」「ユーリさまのためです。シャラさまやイル・バーニさまを信じて任務を遂行いたします」
「アリエルさま、ありがとうございます。では、お着替えを」アリエルは女官の制服に着替え、シュンシューンと抱擁した後、馬車に乗り込んだ。
「ママ、行ってらっしゃい」子供達の見送りを受けて。











「アリエルさま、一応、女官なのですからあまりキョロキョロしないよう に」
「はい」(でも、見とれてしまうのよね。立派な建物だわ)

太陽が沈み、回りが暗くなった頃、アリエルはイル・バーニの私兵に案内 されて、王宮の天井裏へ。
真下はユーリさまのお部屋である。
「では、アリエルさま。お気をつけて」
    (アリエルさま。帝国の興廃はアリエルさまにかかっています。 よろしくお願いします)
私兵は祈るように、その場を去った。
(天井裏に複数の人間がいると、物音でばれてしまうので)

そのころ、カイルはキックリから勧められたワインを飲んでいた。 「もうすぐ、ユーリがこの帝国に来てから3度目の春が来る・・・」

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ユーリの部屋の扉が開いた。
イシュタルさまの御寝室に無断で入れる方と言ったら、おひとりしかいな い。廊下で女官たちがささやいている。

カイルは、ユーリに覆いかぶさるとこう言った。
「ユーリ、私のものになれ」

アリエルは、ハッと気が付くと、手元にあるアレのスイッチを入れた。
シュンシューンが未来人からもらった縮小光線銃(★)である。



眼下では修羅場が繰り広げられていた。
「陛下、やめて」「こんなの、エジプトのあの男と変わりないよ」
アリエルは心を痛めながらも、この悲劇を救えるのは自分しかいないこと を思い知った。

そして、いつのまにか衣服を脱ぎ去ったカイルが上を向いた瞬間、縮小光 線をカイルめがけて発射した。




カイルはあせっていた。
「おとなしくしろ、ユーリ」「私が望むのは、お前だ」
ユーリは抵抗しているが、段々力が抜けているようだ。今までの経験から 行くと、今晩中に何とかなるはずだった
なのに、肝心な大砲が全く使えないのだ。カイル自身、この日のために数 日前から節制してきた。
もちろん、皇子として必然的に積まされた女性経験からユーリをモノにす る自信はあり、さっき飲んだワインもいつもと同じ適量。
愛しいユーリを目の前にして気持ちも高ぶっている。だけど、今日の大砲 はなんてことだ。
こんな小指以下の状態では、とてもユーリの固く締まったつぼみは開花さ せることはできない。
しかし、ここでやめるわけにはいかない。男としての意地がある。
「やめろ、ユーリ」「今、この国で最高の男は私だ」
言葉だけがユーリの上を空回りしていく。

そのとき・・・・・




「皇帝陛下!!」ハディが入ってきた「今宵だけはユーリさまを」
カイルはとっさに「呼んだ覚えはない、下がれ」と言ったが、内心ほっと していた。
これで、ユーリが下がってくれれば、ユーリのことを思いやって事に及ば なかったことになり、男の名誉は保たれる。
期待通り、ユーリはハディと共にカイルの部屋をあとにした。

その瞬間、アリエルは縮小光線の解除光線をカイルに当てた。
実はさっき、アリエルはカイルの大砲めがけてピンポイントで縮小光線を 発射し、小さくしたのだった。
(三姉妹からの依頼は、ズバリ、それであった)
元に戻さないと、カイルさまの跡継ぎができなくなってしまう。

「攻略法を誤るとは陛下らしくない」「美しい娘を見つくろってきましょ うか」
大砲の膨らみが布越しに分かるのをちらちらと横目で見ながら、イル・ バーニがカイルに説教している。(イルに対しては男の名誉は保たれた)
やがて、イル・バーニとカイルがそれぞれユーリの部屋を後にすると、イ ル・バーニの私兵が天井裏にいるアリエルを迎えに来た。




三姉妹のお部屋のとなりで、「アリエルさま、ありがとうございます」三姉妹の部屋の隣室で、さっき馬車に乗って きた女官がワインを手にしながらお礼を言った。
「ただいま、三姉妹さまはユーリさまのところに・・・・えっ??、お召 し??」
アリエルは、ユーリさまのお召しを受けた。
「話は三姉妹から聞いたわ。アリエル、ありがとう。」
アリエルは感激にうちふるえた。このような状態でも下々の者に対する配 慮を忘れないユーリさま。
きっと、素晴らしい皇后さまになるに違いない。

アリエルは、もとの部屋に戻ると、与えられた寝台で休もうとし た・・・・
が、休めなかった。大勢の女官が押しかけてきて、一晩中おしゃべりに話 がはずんだから。


翌朝、気まずい雰囲気で朝食を取られているカイルとユーリを後目に、一台の馬車が王宮を後 にした。
「ただいま。あれ、子供達は??」
「昨夜、王宮で騒ぎがあって、私も召されたので、隣の小隊長の奥さんに 子供達を一晩預かってもらったんだ。文官役職者が集合した頃には騒ぎは収まったみたいだけど。それにしても、凄いおみやげだねぇ。チョーカーに、ネックレ スが山盛り。一つ、奥さんのところへお礼に持って行かなきゃ」
「ええ。そうそう、シュンシューン、特殊光線銃返すわ。それより、凄い もの見ちゃった」「何??」「皇帝陛下とユーリさまったら・・」アリエルは真っ赤な顔をして語った。そして・・
・・・・・・以下略




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(★)あれ、縮小光線って、カイルとユーリが結婚してから、タイムマシ ンとセットで未来人からもらったのでは??って。(パロディ2話・ユーリさまの里帰り)
まあ、細かいことは気にしないでください。気になるかたは、それとは別 の「縮小光線銃」と思って下さい。



シュンシューンとシャラの地位
シュンシューンとシャラ、お互い呼び合うのに敬語を使っていますが、ど ちらが上位なのでしょうか。
実は、一概には言えないので、あえてぼかしてあります。

例えていえば、親会社の係長と子会社の部長、どちらが上か、というとこ ろです。
(もともと、侍従や女官というのはとても分かりにくい地位です。職制上 はヒラですが、陛下や寵姫に直接お仕えしているので、それなりの尊敬も受けていますし、下級官庁の上役とも対等に渡り合えます)

シュンシューンは、といえば、文官の中では中の上で、皇帝陛下から直接 お召しを受けるような特殊な任務もある、という設定にしてあります。
ですので、三隊長には敬語を使っていますが、ある程度の兵士なども掌握 することができるわけです。(という設定です。)


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