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「天は赤い河のほとり」パロディ小説(14)

ナキアさまの一日
 
 
 
 

話の舞台
カイル・ムルシリ帝治政○年のヒッタイト帝国・カルケミシュ。
ここにはナキアさまの実子・ジュダ皇弟殿下の宮殿があり、その中の一区画に、少し前に失脚したナキア前皇太后が流刑という形で暮らしている。
原作ではユーリさまがナキアさまに深々と頭を下げ、去って行くところで終わっていたが、その後どうなったんだろう。

 
 


「ナキアさま、おはようございます」と一人の女官がわたしのことを揺り起こしている。
女官と言ってもただの女官ではない。わたしが失脚したとき、皇太后宮にいた多くの女官や使用人たちは逃げるように宮殿を去っていたが、その中で十数人の女官や使用人が「カルケミシュでも地の果てでもお供させていただきます」と残ってくれた。その、貴重な部下なのである。
皇太后宮にいた頃は十人近い女官が起こしに来てくれたので、足音だけで目が覚めたものだが、今は親しい女官が優しく揺り起こしてくれる。質素だが気持ちのいい目覚めである。

朝食は、ジュダの宮殿の厨房で作ったものを分けてもらい、お付きの者と一緒に食べる。
(流刑とは、食事付なのである)
かつての宮の食堂よりはるかに狭い部屋だが、そばに仕えている者のぬくもりが伝わってきて、まんざらではない。かつて、わたしはだだっ広いダイニングで食事を取っていた。たいていは一人。時にはあのウルヒ・シャルマと内緒話をしながら・・・・
 
 

回想・1
あの日、貴族たちや元老議会はわたしを死罪にしたかったようだ。政争に負けた側のトップには死。当然のことである。でも、なぜかカイルの奴は私を死罪にはしなかった。ユーリはカイルにぞっこんなので、カイルに従っただけだと思う。
判決の後、生き長らえる事ができた安堵感と、今後の待遇への不安が一杯の私の所に、ユーリは勝ち誇った表情で頭を下げに来た。なぜわたしがお礼を言われねばならぬのか・・・・

宮にもどったわたしは、わずかな手回り品を整えると、馬車に乗せられた。今までわたしが使っていた馬車だが、装飾品がすべてむしり取られていたのが痛々しい。でも、これがわたしの運命・・・

カルケミシュの宮殿に着いたわたしは、ジュダの所に拝謁した。今まではわたしの子であり、位もわたしのほうが高かったが、今日からは宮の主人、ジュダ・ハスパスルピさまに預けられた囚人という立場。
自分の母親を囚人として扱わなければならないジュダ、ジュダの新たな妃 アレキサンドラも困惑の表情を隠せなかったようだ。

その後、わたしはこれからの住まいとなる離れへ向かった。
そこには、宮でわたしに仕えていた女官や使用人が十数名並んで立っていた。いずれも懐かしい顔ぶれである。政治・軍事関係者ではないので、そのままわたしに仕えることを許されたようだ。
よく見ると、水くみの下男が傷だらけで立っていた。
「その傷は??」「はい、宮を離れる際に、ナキアさまの馬車を持ち出そうとする者どもがいたので、お守り申し上げたのです。残念ながら、馬車に付いていた飾りはむしり取られましたが、馬車の本体はお守り申し上げました。」ちょっぴりはにかみながら彼は答えた。

わたしは、思わず目頭が熱くなり、その下男のところに駈け寄ると抱きしめた「そ、そなたはこ のようなわたしのために、こんな傷だらけになって・・・・」「ナキアさま、もったいのうございます。ナキアさまは小さい頃からわたしを水くみ係としてお側 においていただきました。」わたしは思いだした。確かに水くみ係としてこのものを使ってはいたが、「水が臭い」「水瓶が汚れている」と張り倒したり、蹴飛 ばしたことも少なくなかった。
それなのに、傷だらけになって馬車を守り、こんな辺境にまで付いてきて・・・・
わたしは彼を抱きしめながら涙が止まらなかった。

わたしがここで生きている限り、この者たちはここでわたしに仕えながら暮らしていける。虜囚の辱めを受けることになっても、この者たちのために平穏に生き抜いてみよう。わたしは決心したのだった。
 
 

わたしの暮らし
こうして、わたしの新しい暮らしが始まった。
わたしは、死罪に準ずる流刑(監禁刑)ということで、わたしの居住スペースは宮の中に設けられた「離れ」と決められた。その離れのそとに出る場合はジュダの許可が必要で、さらに、元老院か王宮の許可がないと宮の外に出ることは厳禁されている。
でも、ジュダは可能な範囲でいろいろ整えてくれて、囚人としては非常に恵まれているだろう。少なくとも、わたしがかつて牢にぶちこんだ囚人に比べれば。

お付きの者とのなごやかな朝食は進んでいる。
宮にいたときの豪華なメニューではないけど、土地のものを上手に味付けしてあり、調理人の真心を感じるメニューである。宮にいたころは、このような優しい味には触れたことがなかった。ジュダにアレキサンドラ。調理人たちとも上手くやっているのだろう。

「お食事中失礼します。ナキアさま。本日のご予定ですが」ジュダの侍従が告げに来た。
「午前中、元老院より文官がご機嫌伺いに参りますので、必ず謁見をお忘れなく。以上です」

3ヶ月に1度程度、ハットゥサから文官が「ご機嫌伺い」と称してやってくる。
「ご機嫌伺い」とはいっても、実際は囚人であるわたしの監視業務であり、2回続けてそれを拒むと、即座に首をはねられる決まりになっている。
同じ文官が何度も通うとナキアさまと通じてしまう恐れがある、という理由で色々な文官が交代で来るのだが、これが大変な苦痛なのだ。
文官の中には敵意むき出しの者も多く、囚われの身とはいえ、刺すような視線と厳しい質問にいたたまれなくなるのである。
 
 

回想2
部屋に戻って、文官の到着を待っていると
「元老院文官、シュンシューン・イナリさまがお見えになりました」女官がやってきた
「今日はシュンシューン・イナリなのね……」シュンシューンは文官の中でも、割と丁寧に接し、傲慢な態度をとらないので、わたしは少しほっとした。

シュンシューン・・・わたしは思い出した。
あの男(シュッピルリウマ帝・ナキアの夫)がくたばったあと、カイルが皇太子になるのを阻止するため、ウルヒの考えた策略にのっとり、カタパの街に偽イシュタルと偽のシュンシューンを送り込んだことがあったっけ。
偽イシュタルはユーリとカイルによって暴かれたし、偽シュンシューンの所には妙な娼婦が現れ、シュンシューンの妻アリエルによって暴かれてしまった。
あのとき、偽シュンシューンを演じたのは宮で務めていた下男のひとり。シュンシューンに似ていると言うことでウルヒに目をつけられ、カタパに送り込んだのだが、結局七日熱で死んでしまった。
 
 

ご機嫌伺い
わたしが応接室に入ると、既にシュンシューンが待っていた
「ナキアさま、ご機嫌はいかがですか」
型どおりの会話が交わされた後、シュンシューンは「決まりですので」と席を立ち、わたしの住む離れを見て回った。
文官によっては好奇心と恨みからか、衣装箱を開け、わたしの下着まで調べて回る者もいて、まったく気分が悪い。一方、シュンシューンは乱暴に家捜しをすることはしないが、書斎の薬品庫だけは時間をかけて調べている。
そう、皇太后宮を出るとき、薬品庫のチェックは彼がしていたっけ。正確には彼とカイルの妹で第四神殿神官のネピス・イルラ。本当なら薬品庫の中身は全部没収されても仕方ないが、彼とネピスは、人命に関わるような薬品や人を操る薬品以外はできるだけわたしが持ち出せるように取りはからってくれたのである。
で、薬品を勝手に買い足していないか、調べているのである。

「ナキアさま、ご協力ありがとうございました」調査を終えたシュンシューンは深々とわたしに向かって頭を下げた。「『ナキアさまはつつましく、且つ御健勝にてお過ごしです』とカイル陛下に報告いたします」
シュンシューンが部屋を出る前、わたしは彼に声をかけたのだった
 
 

内職
昼食を食べ終わったわたしは、小さなかごを持つと、宮の中庭に出た。
(当然、近衛隊の兵士が見張りに付いているが。)
そこには数人の市民がネコを抱えて待っている。
「ナキアおばちゃん、こんにちわ」「ナキア先生!」
わたしはその輪の中に入った。市民が持ってきたネコを手に取り、飼い主から病状を聞き、かごの中の薬を与える。
そう、ペット専門の獣医のアルバイトをしていたのだった。
人間の治療をするために必要な医師や神官の資格は剥奪され、千種類以上も及ぶ薬も皇太后宮を出るときに多くが没収されたが、もともと薬のプロであるわたし。持つことを許された薬を使って獣医を始めたというわけ。
アルバイト代の使い道だが、大半は、安い給金で私に仕える女官や下男に小遣いとして渡し、あとは嗜好品を買ったりするぐらいかな。
 
 
 

書斎にて

何匹かのネコの治療が無事終わった。今日は平民の家のネコが多く、あまり儲からなかったな・・・。
(平民と貴族では治療費が異なるのである。でも、貴族は威張るからその面ではいやだけど。)
わたしは、夕食までの間、書斎にこもることにした。
「妙な薬を発明しないように」と薬品庫のある書斎へは入室できる時間が制限され、しかも完成した薬の内容は元老院に報告することが義務づけられている。
それでも、私は薬をいじるのが好きなので、許された時間目一杯をここで過ごしている。
とはいっても、人間を操る薬を作る気力はすでにない。先日は、ネコの病気を治す薬を開発し、元老院から許可をもらって量産し、獣医のアルバイトで使用している。おかげで、カルケミシュの町がネコだらけになってしまったが。
今作っているのは、若返りの薬。ベースとなる薬の種類に制約があり、数年分しか若返りできなさそうだが、何か予感がするのだ。完成したら、それを必要とする人が大喜びをする予感が。
 
 
 
 
 

親衛隊??〜消し去りたい過去
「失礼します。親衛隊の隊長と申す者がナキアさまにお目にかかりたいとのことですが」
夕食前、控室に居るところに、近衛隊の小隊長が告げに来た。
また奴らが来た。ハットゥサに居たときにわたしが使っていた『私兵』の残党が。わたしはブルーになった。
囚われの身とは言え、一応平穏に暮らしているわたしに私兵などは必要ない。それに、わたしには私兵を持つ権限も無ければ気力もないのだ。
ハットゥサの皇太后宮を出るとき、全員解雇と言うことを元老院から告げられているはずだが、私兵時代の暮らしが忘れられず、私を頼ってきたのだろう。何か任務をさせるたびにカネを与えてきたものなぁ

ちょうど控室にシュンシューンが入ってきたので、簡単に事情を話した。
「ナキアさま。かつての私兵と関わりを持つというのはいけません。元老院にバレると、誤解される原因ですので、私が追い返してきましょう」
彼はそういうと、宮の近衛兵を伴って、門の方に向かっていった。
それにしても、彼っていったい何なんだ。仕事の内容や権力にもこだわらないし、装飾品もわずかしか付けていないところから、そういった物欲もないのだろう。それに、痒いところに手が届く彼の心遣い。わたしも、こんな部下がいたら過ちを犯さずに済んだのかもしれない。
 
 

夕食
シュンシューン・イナリも同席した夕食が始まった。もちろん、わたしが招いたのである。
通常、このような形で元老院や王宮の者と接することは禁じられているが、シュンシューンなどごく一部の者との会食はジュダの許しを得ることで認められている。
ジュダやアレキサンドラも同席し、食事が始まった。
前回、彼と会食したときは「太陽の昇る国の文明」の話をしてくれたが、今日の話題は「太陽の昇る国の風習や価値観」だった。

ユーリとは敵対するばかりで、この類の話は一切聞くことなかったので、とても新鮮である。
(カイルはこんな話を毎日のようにベッドの中で聞かされ、ユーリの考えに染まったのかなぁ…)
 
 
 

入浴
食事も済み、女官が「お風呂の用意がととのいました」とわたしを呼びに来たので、浴場に向かった。
小さな浴場で女官に軽く垢をながしてもらった後は、香油を断って一人にしてもらった。
湯気越しに鏡があり、そこにわたしのボディがぼんやりと写っている。
鏡を見るたびに私は見とれてしまう。子供をひとり産んだとはいえ、まだまだ張りがあるバスト、くびれた腰、ちょうどいい大きさのヒップ、スレンダーな足。さすが、王家嫡流ののプロポーションである。
それに、どこかのタワナアンナみたいな「背中の矢キズ」もないし。あっ、あれはわたしが原因か。
時々例の水盤でユーリの入浴シーンを覗くが、ユーリは未だに子供みたいな体型をしている。負けないぞ。
あの男(先々帝=ジュダの父親)が亡くなってから、わたしはずっと空家。もったいないなぁ。ウルヒは亡くなる直前に抱きしめてくれただけだったし。
わたしは既に皇太后ではなく、子供さえ作らなければ(皇弟殿下に弟や妹が居るとややこしくなるので、子供が出来るとその子は奴隷として売られることになるそうだ)多少の脱線行為は咎められないはずなのだが、今ひとつ踏ん切りがつかないのである。が………
 
 

夜這い
そういえば、シュンシューンは「太陽の昇る国の四十八種の魔法」で女性を酔わせるという。
ひとつ、わたしも酔わせてもらいたいものだ。わたしはためらうことなく、ゲストルームのある区画に向かった。(彼のゲストルームは離れの区画にあるので、出入り可能。通常、ハットウサから来た文官はここには泊まらないが、食事で遅くなるため、わたしが離れに泊まっていくように勧めたのである)
シュンシューンは、ここに来る長旅の疲れと、先ほどの夕食で酒を飲み、今頃はゲストルームで眠っているに違いない。
部屋を警護しているシュンシューンのお付きの者には「シュンシューンさまからお召しをいただきました」とウソを言って扉を開けてもらう。好奇心一杯の視線を浴びながら。

部屋に入ると、案の定、彼は毛布をかぶって眠りこけていた。わたしは、ガウンを脱ぎ捨てると、彼の傍らに寄り添った。彼はまだ起きない。シュンシューンは酒に弱く、とっても眠りが深い、という噂は本当だったようだ。わたしは、シュンシューンの丸っこい頬に唇を付け、髪をなで、耳に息をふきかけた。
ようやく、彼の目があいたので、毛布の上からのしかかり「あなたも長旅の間ずっと『ひとり』だったのでしょう。奥さんもいないことだし、病気の心配もしなくていいのよ。ずっと空き家だったのだから。今宵はわたしと過ごして……」と薄ものに包まれた自慢のボディをおしつけた。
実は、彼は香油の匂いを好まない、という情報を仕入れており、そのためにさっきお風呂で香油を断ったのだ。

「ナキアさま」彼は言った。わたしは次の言葉を期待した。でも、彼はとんでもないことを始めたのだった。
「こちらをご覧下さい」彼はむくりと起きあがり、みそ汁のお椀のような物を取り出すと、水差しの水を注ぎ、何やら呪文を唱えている。
何か、ぎこちない唱え方がかわいい。わたしは薄ものを脱ぐと、彼を背中からぎゅっと抱きしめたが、彼は呪文の方に夢中。そんなの後にして、早くかわいがってよ。



「ナキアさま。こちらのプチ水盤をご覧下さい」
わたしは、水盤に写っている光景に目を疑った。水面に写っているのはハットゥサの王宮の一室。そこにはカイルやユーリ、イル・バーニ、キックリに三姉妹などの側近や女官たち、さらに、シュンシューンの妻アリエルまでが集まって、何か賭け事のようなことをしていた。
床の上にはバスケットが3つあり、1つには「彼女は誘惑しない」残りのバスケットには「誘惑するが失敗」「誘惑して成功する」という粘土板の札が付いていて、中には金貨が沢山。
集まった人は、喜んでいる人と、悔しがる人がいる。

そして、カイルの席の前には大きな水盤があり、そこには素っ裸のわたしと、プチ水盤を操るシュンシューンがリアルタイムで写っていたのだった

まさか、ハットゥサでわたしをダシにした賭け事が行われていたとは………。
まあ、シュンシューンの持っていたプチ水盤で助かったけど、あんな物が出回るようになっているのかしら。
今日のところはあきらめるとするか。………。

 



寝る前の考え事
でも、もし、覗かれていなければ彼は私の求めに応じたかしら。先に大砲の調子を調べれば良かった。こういう作戦に疎いのが元王妃の悲しいところである。

女官が整えてくれた質素なベッドに横になったのはいいけど、なかなか寝付けなかった。
先ほどのシュンシューンの「太陽の昇る国では、身分が高くても勝手に人の命を絶つことは出来ない」と言う話である。
それでユーリは私が他人を殺したり殺させたりすると、むきになっていたのか……。
わたしは当たり前のことをしてきたと思っていたのに。

この話をもっと早く聞いていれば、もう少しユーリに対する対応を手加減できたのかな。いや、ウルヒやわたしの側近が許さないだろう。
ある意味では、わたしをまつりあげることで利権を得る人たちに囲まれていたあのころ。もしかしたら、操られていたのはわたしだったりして・・・・・

むしろ、太陽の昇る国の価値観に感謝すべきか。
そのおかげで、私は命を長らえることが出来、結果論ではあるが、権力を目指さない暮らしも悪くないことを知ったのだから。
 
 
 
 

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ナキアさまの随従
数百人はいたはずのナキアさまにお仕えする女官や随従。そのうち十数人がカルケミシュに付いてきたことにしましたが、これは、コミックで紹介されているエジプトのネフェルティティ王太后のエピソードの他に忠臣蔵からもネタをいただきました。
赤穂浪士に首を打たれた吉良上野助(きらこうずけのすけ)の孫で吉良家当主の吉良義周(きらよしち か)。吉良家がお取りつぶしとなり、吉良義周は諏訪の国(長野県)へ流刑に。大半の家臣は散ってしまいましたが、忠誠心旺盛な家臣が囚人用の籠に付き従 い、吉良左兵衛が亡くなるまでお仕えしたそうです。流刑生活を送る吉良左兵衛にとって、大きな心の支えになったことと思います。
 
 

直線距離
「3ヶ月に1度、ハットゥサから文官が・・・」のくだり、最初は1ヶ月に1回、と書いたのですが、念のため世界地図を調べてみると、ハットゥサとカルケミシュに相当する場所は、直線距離でおよそ600km離れていました
この間にはトロス山脈(現在名)という標高2000m超級の山岳地帯が横たわっていることから、実際のルートは山道で1000kmぐらい、片道1ヶ月はかかると思われます。両方とも内陸都市なので、船は使えません。
すると、調査に出かけた文官がカルケミシュから戻るのに2ヶ月以上はかかるので、2ヶ月以下の間隔 だと、前に出た文官が戻ってくる前に次の文官が出発することになります。このような調査の場合、前に行って来た者の報告を聞かずに次の者を派遣するという のはとても非現実的なので、3ヶ月に1回にしました。

実際は、監視業務は現地の人に任されていたのだと思いますが、それでは夜這いの話が書けませんので・・・
 
 

シュンシューンの大砲
あれだけ他の女を寄せ付けなかったシュンシューン・イナリ。でも、さすがに(囚人とは言っても) 元王妃を邪険に扱うことは出来なかったのです。
シュンシューンの直感によって、未遂に終わりましたが、大砲の整備状態については、永遠に秘密です。知りたい方は、タイムマシンを使ってご自分で調べに行って下さい。

この話には後日談があります。
「ナキアさまがシュンシューンさまのお召しを受けた」!!。ナキアさまが部屋に入った直後、シュンシューンの随従の一人がハットゥサに早馬を飛ばしました。随従にしてみれば一大事です。
で、半月ほどで早馬が王宮に着き、皇帝陛下ご夫妻やキックリ、たまたまそこに居合わせた三姉妹とアリエルのもとに、報告がもたらされました。
息せき切った伝令は、旅装を解く暇もなく、皇帝陛下に奏上します。
「シュンシューンさまがナキアさまを寝室にお召しになったようです。すぐに調査の者を」
しかし、皇帝陛下をはじめ、居合わせた人は皆で大爆笑したのでした。
 
 


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