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「天は赤い河のほとり」パロディ小説(13)

やきもちカイル

この話は あんこう椿さんの天河パロディ小説「黒太子の横恋慕日記」のパロディです。



シュンシューン、お召し
キックリが「皇帝陛下がお呼びです」と元老院文官、シュンシューン・イナリの執務室にやって来た。
キックリに案内されたところは、皇帝の執務室ではなく、あの「赤樫(あかがし)の間」。王宮のはずれにある薄暗い部屋である。
そこに、カイルは明かりもつけずに一人でぽつんと座っていた。表情も暗く、どこかやつれたお顔は いつもの溌剌(はつらつ)としたお姿ではない。

「皇帝陛下!??」シュンシューンはカイルに声をかけた。
「シュンシューンか。頼み事がある」カイルはぼそっとした声で返答し、玉座のすぐ横にあるスツールに腰掛けるように促した。玉座の横の席??。皇帝陛下とひそひそ話??。いったいどうなさったのだろう。
それに、こんな暗い表情の陛下は見たことがない。
キックリはといえば、抜き身の剣を持ち、緊張した面もちで扉の隙間から外を警戒している。
 
 

カイルが語る、事のおこり
「新ミタンニ国王、マッティワザ陛下。かつては黒太子として勇名を馳せた男が、ハットゥサにやってきたのはそなたも知っているだろう。
表向きは皇帝と皇妃へのご機嫌伺いとのことだが、何か奴(マッティワザ陛下)の様子を見るとそれだけとは思えず、下心があるに違いない。

案の定、奴はユーリを誘ってきた。「明日、ハットゥサ自慢の新都市『テシュプランド』を案内して欲しい」と。
 藩属国とはいえ、一国の国王の頼みを断るわけにもいかないだろう。
本当はユーリとマッティワザにくっついて監視したいところであるが、その日、私は第一神殿で大切な神事があり、どうしてもユーリと行動を共にできない。
寵妃のために神事をほったらかしにしたのでは民に対して示しがつかないではないか。

さらに、マッティワザは「庶民気分を味わいたいから、随従を付けずにお忍びで」回りたいと言っており、重臣や上級の女官はつけないでもらいたいとの意向。
とりあえず、護衛ということで若い兵士と女官を付けるようにはしたが、それだけではあまりにも心もとない。
もし、ユーリに何かされたら、と思うと……。それが心配で夜も眠れないのだ。

「シュンシューン、どんなことをしてもいいから、ユーリをマッティワザ陛下の手から守ってくれ頼む。この通りだカイルは玉座を降りた。
いくら他の者をシャットアウトしている密室とはいえ、一国の皇帝陛下がこんな文官にひれ伏して頼み事をするとは。よっぽどユーリさまが心配のようだ。シュンシューンは人を愛する者の美しい姿を見た。
「カイルさま、もったいのうございます。どうぞ、お顔をお上げください。この任、誠に光栄至極、ありがたく務めさせていただきます。」「でも、私より腕の立つ方は他にいくらでもいるのでは」
「それが、めぼしい側近は全て面が割れており、こっそりとユーリを守るのには使えないのだ。それに、イル・バーニゆずりのそなた知略の力も借りたいのだ。」
 

どんなことをしてもいい、と言われても、まさか国賓であるマッティワザ陛下を殺したり傷つけたり、追い出したりすることはできない。
そんなことをしたら、ミタンニと戦争になるかもしれないし、それよりも大切なことがある。
あんこう椿さんのパロディ小説「黒太子の横恋慕日記」に話がつながらなくなってしまうではないか。
 
 
 

翌日
いよいよ当日。空はすっきりと晴れ渡っている。カイルさまの苦虫を噛み潰したような顔が目に浮かぶ。
「いっそのこと、土砂降りの大雨ならよかったのに」と。

そんなことを言っても仕方がないので、妻のアリエル、子供のミツキ、ミニイと共にシュンシューンは迎えの馬車に乗り込んだ。文官一人でテーマパークをうろうろしていたのでは目に付くので、貴族のファミリーに扮してユーリさまをお守りするのである。

テシュプランドのゲートをくぐると、一行はすぐに見つかった。ユーリさまとマッティワザ陛下が親しげに話している後ろから若い女官と兵士が付いていたのであった。
マッティワザ陛下はまだ猫をかぶっており、ユーリさまの体に触れそうな気配はない。
 
 
 

アクシデント発生
ここで、アクシデントが発生した。なんと、ミニイがおもらしをしてしまったのだ。ミツキも「おしっこ」とのこと。女官と兵士がついているし、マッティワザ陛下もすぐには行動を起こさないだろう、ということで追尾を中断して一家でトイレに向かった。着替えとおしっこの面倒は素早く済ませなければならないのだ。
ミツキのおしっことミニイの着替えを済ませ、ユーリ一行に追いつくと、な、なんと付き添いの女官と兵がいない

物陰から「シュンシューンさま、アリエルさま」というかすかな声がするので、振り向くと付き添いの女官と兵が物陰でうずくまっていた。
「どうしたのだ」「シュンシューンさま、申し訳ありません。実は……」兵は話し始めた。
女官はといえば、服がぼろぼろに切り裂かれた状態で泣きじゃくっている。アリエルは手持ちの布を与え、慰め始めた。子供達は、マッティワザ陛下とユーリを探しに行った。シュンシューンは兵から事情を聞いた。
 
 

黒太子の策略〜兵士の話
「皇帝陛下直々の任務を受けた私たちですが、確かに、マッティワザ国王陛下からは邪魔者扱いされていました。
先ほど、ユーリさまがトイレに行く、とおっしゃったので、私たち3人はマッティワザ陛下の提案でトイレの前のベンチに歩いて移動したのです・・・
その時、マッティワザ陛下が女官のドレスの裾を踏まれたようで、女官は転倒したのですが、そのときマッティワザ陛下まで一緒に転んでしまったようなのです。
マッティワザ陛下はさっきまでの温厚な表情から打って変わって「女官、ミタンニの国王を押し倒すとは何事だ」と激しくお怒りになられました。
私たちはひれ伏してお詫びしましたが、「私はかつて『血の黒太子』と呼ばれた男。女如きは一刀のもとに切り捨てたものだ。」と恫喝しながら女官のドレスを剣でズタズタに切り裂きました。幸い、怪我はありませんでした。
そして「おい、兵士。この不届き女をムルシリ二世皇帝陛下の元に連行せよ。『血の黒太子』には護衛など要らぬ。行け!!」と追い出されてしまったのです。」



決意
「私たちが死罪を賜るのは仕方ないのですが、ユーリさまをお守りすることが出来ないのが悔しくて・・・」女官はすすり上げながらシュンシューンに訴えた。
「そなたたちは何も悪くない。そなたたちの命は、私が命をかけても守り通そう。マッティワザ陛下のあの行動は、きっと、護衛を追い払うための口実だったのだろう。」シュンシューンはマッティワザ陛下のしたたかさに舌を巻いた。
それにしても、女官の体を傷つけずにドレスだけを切り裂くなんて、何という剣の腕前なんだろう。
そこに、知り合いのキャスト頭が通りがかったので、簡単に事情を話し、「後は私たちが引き受けるから、事務所に隠れていなさい」と二人をキャストに託した。

シュンシューンとアリエルは決意を新たにした。「ユーリさまをお守りできるのは私たちしかいない」と。
 
 
 

作戦開始
そこに、ユーリとマッティワザ陛下の後をつけていた子供達が戻ってきた。
二人の次の行き先が分かったようだ。
ちょうど、「エジプトクルーズ」に乗られるようで、行列に並んでいる。マッティワザ陛下はご機嫌も良く、さっきの騒ぎはやっぱり演技だったのだろう。
よく見ると、マッティワザ陛下は自分の小指をユーリの小指に絡みつけながら何か語っている。監視の者がいないなって、早速アクションに出たようだ。
「私のいない間に兵隊さんはお腹が痛くなったようだし、女官は頭が痛くて護衛を中止したみたいだけど、護衛なしで大丈夫かなぁ??」と、ユーリ。
「何をいうか、私はかつての『血の黒太子』。私にかなう者などいるわけがない」

虫や動物を操る神官の位を持つシュンシューンは、近くにいるを操り、二人の小指を刺させた。
「いたっ」「蚊に刺されたようだね、ユーリ。私が舐めて消毒してあげようか」「だ〜めっ」
取りあえず、手は離したようだが、二人の間に水を差すことはできなかった。

二人はボートに乗った。スキッパー(話し手)はシュンシューンの知人だったので、ちょっと話の内容を変えてもらった。
「エジプトから連れてきたこちらのワニは、『やきもちワニ』といいまして、ファラオが他国の国王と側室が密通したのを発見した際、二人まとめてこのワニの餌としたと言われています。ここに乗っている奥様方。浮気をすると、亭主の焼き餅は怖いですよ〜」
……実際は、ただの装飾品として配置されたワニである。
「え〜っ、こわーい」このセリフを聞いたユーリは、マッティワザ陛下から数センチ離れるようにお尻をずらした。けど、陛下はその分ユーリの方に寄ってくる
 
 
 

陛下、転倒
「なんかうまくないなぁ」シュンシューンとアリエルは話している。
マッティワザ陛下は、またユーリと手をつなごうとしている。
すると、そこに果物の売店があったので、シュンシューンは子供達にあるものを買い与え、指示を出した。
子供達はユーリたちの前を「わーい」と走って横切った。

次の瞬間、マッティワザ陛下は転んでしまった。バナナの皮を踏んでしまったのだ。

「いたたたたた…」せっかくのいいムードもぶちこわし。
でも、お忍びなので、キャストを呼んで怒鳴りつけるわけにもいかず、腰をさするのが精一杯だった
(元々、子供優先のテシュプランド内では、子供が貴族の前を横切ることは許されていたが。)
 
 
 

命中しない弓矢
二人は「テシュプランド・シューティングギャラリー」に着いた。ここは、弓矢で的を射抜いて得点を競うアトラクションである。
マッティワザ陛下の目は輝いた。かつて『血の黒太子』の異名をとった彼は弓の使い手でもある。
ここはひとつ、ユーリの前でかっこいいところを見せて歓心を買いたいところ。

彼はキャストから矢を受け取ると、的の前に立った。
矢を射るが、今日はなぜか的の中心に全く命中しない。隣で矢を射ている(休暇中の兵士と思われる)男は次々と中心に命中しているのに・・・・・ 
泰平の世の中で腕が落ちてしまったのか・・・・・
カッコつけるどころか、「たまには調子の悪い日もあるわよ」と、ユーリになぐさめられる始末であった。

実は、的係のキャストもシュンシューンの知り合いで、既に細工がしてあったのだ。
矢が命中する瞬間、裏側から的を少し動かしていたのである
 
 

ユーリとシュンシューン
「ちょっとトイレに行ってくる」マッティワザ陛下はベンチにユーリを残してその場を離れた。
ユーリが回りを見渡すと、近くのベンチにシュンシューン一家がすわっている。

「シュンシューン、あなた もしかして……」
「ええ、皇帝陛下の特命で」
「もうっカイルったらぁ。そんなに私のこと心配なのかしら」
「それは、かなりご心配の様子でした。ユーリさまも、そのお気持ちをくんでいただいて…」
「ええ、もちろん。私も気を付けているのよ。でも……」
「もちろん、マッティワザ陛下は国賓ですので、マッティワザ陛下に失礼のないようにユーリさまをお守りします。」
これだけの会話をアイコンタクトで行ったユーリとシュンシューン(一家)。引き続き他人のふりをし続けることにした。
 
 
 

昼食は焼肉
お昼になったので、昼食をとることにした。
普段であれば王族・貴族専用レストラン「クラブ333」を利用するのだが、今日はお忍びなので一般のレストランを利用することになる。
マッティワザ陛下が選んだのは、東方民族料理の「ジンギスカン」。兜の形をした鉄鍋に羊の肉をのせて食べる焼き肉料理である。
「焼き肉を食べるのは深い仲」ということを意識しての行動である。ユーリが気づいてくれるといいな、と彼は思った。

一般のレストランなので、鉄鍋の下に小さな薪(まき)を足して自分たちで火を維持しなければならないが、それが楽しみのひとつでもある。
ユーリが肉、マッティワザ陛下が薪、と役割を分担して料理を食べ始めた。ラム肉が香ばしく焼け上がっていく。しばらくはいいムードだったが、しばらくすると猛烈な悪臭が漂いだした。
「もう、我慢できない」マッティワザ陛下はレストランを飛び出し、焼き肉どころではなくなってしまった。

実は、ここにもシュンシューンの手が回っていた。薪の中にくさやの干物を混ぜておいたのである。


 



イシュタル城ミステリーツアー
マッティワザ陛下はさっきからテシュプランドの中央にそびえ立つお城が気になっていた。
「ユーリ、アレは何だ??」「美しい外観のお城はイシュタル城という名前をつけてもらっているけど……
マッティワザ陛下は入らない方がいいわ。中には恐ろしい魔物がいっぱい棲んでいるんだもん」(それに……きっと何か仕掛けてあるんじゃないの……)
「ユーリ、私は血の黒太子だぞ。怖いものは何もない」
「でも……」「いいから、入るぞ」

20人近いゲストとともに、ユーリとマッティワザ陛下は案内人の後について進むことになった。
中には、帝国に害したズワやウルヒ・シャルマの像など、おどろおどろしい演出で飾られている。
女性や子供の中には怖くて泣き出す者が続出している。
ユーリも「きゃー、怖い」と俺の所に抱きついてこないかな。マッティワザ陛下は密かにそう思った。
でも、暗くてよく分からないが、ユーリは怖そうな表情をしていない。ちぇっ

最後の大広間に出た。大広間の中央には、布をかぶせた大きめの人形のようなものがおいてある。
案内人は、「それでは、この血塗られた悪魔のすむお城の帝王を、この剣を使って一撃のもとに突き倒したいと思います。どなたか、勇者の役をやっていただく方、いらっしゃいますか??」
と、案内人が言い終わらないうちにマッティワザ陛下は勇者に立候補した。
(21世紀のTDL「シンデレラ城ミステリーツアー」とは異なり、テシュプランドでは本物の剣をつかうので、大人が勇者を務める。)

ユーリも、心なしかうっとりとこちらを見ているように見える。
「それでは、この『血の大王』を一撃で倒して下さい」とキャストが人形にかぶせてある布を取った瞬間、

「お、おれにはこの人形は刺せない」マッティワザ陛下はへたり込むとぶるぶると震えてしまった。
キャストが立つように促したが、マッティワザ陛下は立つことが出来ない。
やむなく、代わりのゲストが決着を付けたが、回りのゲストはへたりこんだ男の事をくすくすと笑っている。
 

ユーリは思った「やっぱりなぁ。でも、いくら何でもやりすぎだわ。シュンシューン、じゃなくてカイルったら………
いつもの魔物の人形ではなく、よりによって『血の黒太子』の人形を用意するなんて。もおっ」
 
 
 

グランド戦車・レースウエイ
ベンチで「はちみつレモン」を二人で飲み、マッティワザ陛下は少し気を取り直した。

次に二人が向かったのは「グランド戦車・レースウエイ」。馬に引かせた戦車に乗ってコースを一周するアトラクションである。通常、キャストが戦車を操縦するが、戦車の操縦経験のあるゲストは自分で操縦してもよい。
実際、彼女を乗せて戦車の腕を披露している休暇中の兵士もいる。
彼氏の運転する戦車に乗っている女の子は一様にみなうっとりしている。カッコイイのである。
世界一の戦車隊をもつ国、ミタンニ国王のマッティワザ陛下も、当然自分で操縦する方の列に並んだ。

キャストが操縦する方であれば、多少のムードぶちこわしはできるのに、とキャストたちは青ざめたが、シュンシューンは平然としている。

列が進み、マッティワザ陛下とユーリの順番になった。
マッティワザ陛下は慣れた手つきで手綱を取ると、コースに出発したのだが・・・・

二人の戦車を引っ張る馬の様子がおかしい。そして、お尻から鬱金(うこん)色のペースト状の物体を撒き散らし始めた。
「きゃーっ」「何だ、この馬は!!」
ユーリは危うく、それを避けた。そして、戦車に備え付けの盾を手にすると、ペースト状の物体が二人にかからないように必死に防御した。
マッティワザ陛下は手綱から手が放せないので、ユーリに守ってもらうしかない。
ユーリが盾を動かしているので、戦車は大きく揺れ、手綱を握る手は片方を外せない。
それに、 「ユーリを守るはずの私が、ユーリに守られている。」この現実に、ユーリの手を握ることもできなかった。
 

「キックリ殿、ありがとう」バックスペースでシュンシューンは厩頭のキックリにお礼を言った。
「今朝、シュンシューンさまのお使いの方が、『下痢気味の馬を貸して欲しい』と厩に来たときは何ごとかと思いましたが、こういうことだったのですね」
「ああ、マッティワザ陛下は必ずここを利用すると読んでいたというわけなのだ。キックリ殿、あとは……」
「ええ、この馬を厩に連れて帰ります。薬草を与えないと。」
 
 
 

木陰で
テシュプランドには、森の中の散策路というものがあり、二人はそこに入っていった。
ここまで色々と妨害しても、マッティワザ陛下はユーリのことをあきらめないようだ。

気がつくと、二人は茂みの奥のベンチに座っていた。マッティワザ陛下はユーリの肩に手を回している。顔も寄せ合っている。
このままでは、本当に危ない。これ以上二人の仲が進むと、自分がカイルさまの手討ちにあってしまう。
そこで、ちょっと強硬手段をとることにした。

ミニイに木登りをさせ、二人の真上に移動させた。そこで、ミツキが「ミニイ!危ない」
えっ、と二人が上を見ると木の上に子供が。そして、子供が二人の上に落ちてきた。
マッティワザ陛下は敏捷な動作でとっさに受け止めたが、ミニイは(予定通り)大泣き。
ミツキがそこに駆け寄り「おじさん、おばさん、妹を助けてくれてありがとう。ぼくたち迷子になっちゃったの。どうしよう。わーん」
「ねえ、マッティ。この二人、助けてあげて」とユーリ
本当は子供なんて放り出してユーリを押し倒し、唇を奪いたいところだが、初めて「マッティ」と呼んでくれたことに感激して、ユーリの言うとおりにした。
結局、二人は森を出ることになり、森の入り口にいる案内係のキャストに子供を引き渡すまで、子供の相手をするハメになった。
 
 
 

神官の正体
無事に迷子(という設定のミツキとミニイ)を引き渡したマッティワザ陛下は、再び森に入ろうとした。ここで、キスぐらいは決めないと男がすたるではないか。
そこに、白いマントをつけた神官が近づいてきた。こんな所に神官???。あれ??、乳香の匂いがするぞ。まさか???。
「マッティワザ陛下。我がヒッタイトの誇る『テシュプランド』は凄いだろう。貴国も作るのなら、技師を派遣してもいいぞ」
くっそー、あの男。もう来やがったのか。
「ユーリ、マッティワザ陛下の案内ご苦労だったな」「神事はもういいの?」「ご覧の通り、さっき終わってここに駆けつけたのだ」
それにしても、神事が終わった後、着替えもしないで神官の格好でこんな所来るか??。普通は着替えるだろ。
と、喉まで出かかったのを飲み込んで「皇帝陛下にまでお疲れのところお出まし頂き、恐縮でございます。皇帝陛下はゆっくり休んでいただきたく……」とマッティワザ陛下は言った。(そのあと「これからユーリさまをモノにするんです…」とは言わないが)
「陛下、申し訳ないが、ピア皇子が大泣きして、乳母では手に負えないので、ユーリには早々に帰宮してもらうことになった。あとは私が案内しよう」
「いえ、私はすっかり満足しました。ありがとうございます」

こうして、3人はそれぞれの思惑を秘め、王宮に戻った。
 
 
 

その夜、シュンシューン宅で
その夜、(マッティワザ陛下から追い払われた) 件の兵士と女官はシュンシューンの家に招かれていた。
食卓の上には、王宮から届けられた御料理や酒が並んでいる。
当初はカイルさまから「秘密の打ち上げをするので、関係者は王宮へ」と言われていた。
しかし、今日のマッティワザ陛下のご機嫌がうるわしくなく、急遽カイルとユーリはマッティワザ国王陛下を接待することになり、臣下との秘密の会食どころではなくなった。
「それなら」とアリエルは自宅での簡単な打ち上げを希望、料理だけ運んでもらい、内輪だけの集まりとなったのだ。

「まずは、ユーリさまを無事にカイルさまの許にお返しできたこと、乾杯」「乾杯!」
「お二人ともよかったですね。おとがめなし、ということで」アリエルは二人に声をかけた。
「ええ、おかげさまで」「アリエルさまから布を頂かなかったら、私、裸でパークを歩くところでしたわ。有り難うございます」
「お二人も、私たちが交代してからは 裏方でキャストに適切な指示を出してくれたおかげで 今日の作戦は上手く行ったのよね。」
「ああ。それにしても、森の入り口にカイルさまが現れたときの、マッティワザ陛下の悔しそうな顔、見せてやりたかったな」
「でも、今度ミタンニに招待されているのはユーリさまおひとりなんでしょ」「ええ」
「大丈夫ですかねぇ」「さぁ……」
 

その後のことは、著者の知ったことではない。ここから先の展開は、あんこう椿さんの天河パロディ小説「黒太子の横恋慕日記」に期待することにしよう。
 
 
 

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パロディのパロディ

今回は、あんこう椿さんの天河パロディ小説「黒太子の横恋慕日記」のパロディ、つまり、パロディのパロディです。(一応 話は通してあります。) ※2004年発表当時。

もともと「黒太子の横恋慕日記」は、黒太子がハットゥサを訪問、ユーリさまをミタンニに招待するという話なのですが、この話は黒太子がハットゥサに逗留中のある1日が舞台なのです。
 

あと、古代ヒッタイトにバナナやくさや、箸、ラム肉があったかって?。まあ、いいじゃん。


(C) 2004 -2018 SHUN-SHUUN INARI